健康コラム

腸から始まる身体の調節

2019年 12月 19日
立命館大学 スポーツ健康科学部 助教 内田 昌孝 先生

ホルモンは身体の調節役

「ホルモン」という言葉は、ニュースなどで聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。ホルモンは、成長や生殖器機能の調節、エネルギー代謝の調節、ストレスに対する防御といった役割を持っています。特に最近では、バセドウ病などのホルモンの異常からくる病気を公表する芸能人のニュースなどを見る機会もあるかと思いますが、ホルモンが必要ないタイミングで異常に作られたり、逆に必要な時に作られなかったりすると内分泌疾患(ホルモンの異常によって起こる病気の総称)を患ってしまいます。そうでなくてもホルモンは日々の私たちの身体の調節を常に行っているので、我々の健康と直結しているのです。典型的なもので紹介すると「インスリン」というホルモンがあります。インスリンは、血液の糖分(血糖値)を下げる働きを持つホルモンです。このホルモンの働きが悪くなり血糖値をコントロールできなくなる病気を糖尿病といいます。血糖は脳のエネルギー源になるため下げ過ぎても上げ過ぎても健康に害が及びます。そうならないために、インスリンは、食事後の血糖値が上がるタイミングで作られて、上がった血糖値を落ち着かせるのです。このようにホルモンが適切なタイミングで作られることで私たちの健康が保たれているのです。

腸から始まる身体の調節

腸から作られるホルモン

現在では多くの種類のホルモンが発見されていますが、ホルモンが最初に見つかったのが腸になります。小腸で作られ、血流によって膵臓に運ばれて膵液分泌を促すセクレチンというホルモンが発見されたのが最初になります。それから100年以上経って、特殊な腸内の分泌細胞によって放出されるいくつかのホルモンが血糖値のコントロールを手伝っていることが分かってきました。その代表がGLP-1というホルモンです。GLP-1は産生されると膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促進させる働きがあります。GLP-1は腸に入ってきた炭水化物に反応して作られますが、最近ではそれ以外にも食物繊維や短鎖脂肪酸がGLP-1を作るのに一役買っています。前回もお話ししたように腸内細菌が食物繊維をエサにして短鎖脂肪酸を作るため、食物繊維の多い食事が腸内の環境を改善し、我々の健康に役立っているのです。

腸は身体の中心

 今回のコラムでは、「血糖値のコントロール」を1例に出しながら、腸から作られるホルモンについて紹介してきましたが、他にも腸ではセロトニンという精神を安定させる働きのあるホルモンも作られ、脳に影響することも知られています。つまり、私たちが司令塔だと思っていた「脳」も「腸」からいろいろな指令を受けとっているんですね。このように、腸はたくさんの臓器に働きかけ、私たちの健康の維持に貢献する身体の中心となる臓器であることを分かってもらえると思います。次のコラムでは、腸をいい状態に保つ生活習慣についてご紹介していきたいと思います。