健康コラム

身体にとっての小さな隣人

2019年 9月 30日
立命館大学 スポーツ健康科学部 助教 内田 昌孝 先生

皆さんは、一生の中で一番長く連れ添う存在が何かご存知ですか?「自分自身」や「親」、「兄弟」、「家族」と答える方が多いと思いますが、私たちが生まれた瞬間から死ぬその時まで片時も離れることなく私たちを支えてくれている隣人こそが細菌なのです。
細菌といえば、食中毒や肺炎を起こす原因で、私たちが生活から一番遠ざけようとする存在ですよね。今では、色々な除菌グッズや抗生剤といった薬を使用することで、細菌を遠ざけて感染症を予防したり、治療したりしています。今まで遠ざけようとしていた細菌たちが、生まれてから死ぬまでの間、私たちの人生を支える隣人になるとはどういうことなのか?私が担当するコラムでは、この小さな隣人たちと私たちの身体がどうやって仲良くしているのか、仲が悪くなるとどうなるのか、仲良くなる方法はあるのかといったことをご紹介していきます。

身体にとっての小さな隣人

さて、細菌は我々の周囲にたくさん存在していますが、我々の体の中にも生息しています。人の体の中で最も細菌が生息しているのが大腸や小腸といった腸管になります。腸管は食べたものから様々な栄養素を体内に吸収する窓口ですが、多種多様な細菌たちの生息場所にもなっているんですね。また、病原菌から身体を守る免疫細胞のおよそ6割が腸管に集まっています。本来、免疫は細菌達を排除しようとしますが、この免疫と仲良くなれた細菌が腸管に住み着いているのです。このように腸管に生息している細菌のことを一般には腸内細菌といいます。最近では、腸内細菌をテレビや雑誌でも取り上げられているので、ご存知の方もいるかもしれません。腸内細菌と一言で言っても、1種類しかいないわけではなく、500~1000種類、100兆個以上存在するともいわれています。この腸内に生息する細菌たちがどのようなバランスで存在するかによって、病気の発症や悪化に関係しています。裏を返せば、腸内細菌のバランスが整っていれば病気の発症や悪化を予防することができるわけです。
この腸内細菌をターゲットとして、腸内環境を改善する目的からさまざまな食品の開発(プロバイオティクスやプレバイオティクスなど)や食事法の考案(低FODMAP食など)がなされ、さらに腸活といった考え方も広がっています。プロバイオティクスやプレバイオティクス、腸活と呼ばれるものが活用されている所以は、腸内細菌を改善するところにあるのです。このように、栄養吸収や免疫といった重要な仕事をする腸内の環境(腸内細菌)を健全な状態で維持することは、健康を維持・増進させるための鍵として捉えることができます。人生100歳まで生きることも珍しくなくなった昨今、充実した人生を送る(Quality of Lifeの向上)ために、健康は重要な要素となり、多くの人の目標ともなっています。次のコラムでは、腸内細菌叢と健康に関する情報を少し詳しくお伝えしたいと思います。